数寄者・高橋箒庵(たかはし そうあん)によって編纂された、当時の著名な茶道具(茶碗と茶入)を写真入りで紹介した大カタログ。 大正8年から昭和元年にかけて9編13冊が刊行された。 『大正名器鑑』は現在でも茶道具研究の基礎資料としてよく使われていて、 私も公共図書館の蔵書を閲覧したことがあります。 この茶道具大カタログは茶道具のうち、“名物”と茶の湯の世界で呼ばれる著名な茶碗と茶入(濃茶用の抹茶を入れる陶磁器製の容器)が紹介されています。 茶碗編も種類によって分類されていて、例えば国焼茶碗(日本国内で作られた茶碗)も 志野、唐津、織部の部などと分類されてそれぞれ紹介されています。 もちろん樂焼の部もありますが、さすがに樂焼は茶の湯専用の特別な焼物だということなのか陶工や作者ごとに分類されていて、そこには楽焼の祖・長次郎や樂家三代目のノンコウ(道入)などと共に光悦の名前があります。 『大正名器鑑 光悦の部』には18点の光悦茶碗が紹介されていますが、 その18点の銘(一部通称)と判明している所蔵先を挙げてみます。 白樂茶碗 銘 不二山(ふじさん) サンリツ服部美術館 赤樂茶碗 加賀光悦(かがこうえつ) 相国寺承天閣美術館 赤樂茶碗 銘 毘沙門堂(びしゃもんどう) 個人 赤樂茶碗 銘 雪片(せっぺん) 所蔵先不明 赤樂茶碗 銘 雪峯(せっぽう) 畠山記念館 赤樂茶碗 銘 障子(しょうじ) サンリツ服部美術館 黒樂茶碗 銘 鉄壁(てっぺき) 関東大震災で焼失したとされる 飴樂茶碗 銘 紙屋(かみや) 個人 黒樂茶碗 銘 七里(しちり) 五島美術館 黒樂茶碗 銘 雨雲(あまぐも) 三井記念美術館 赤樂茶碗 銘 ヘゲメ(へげめ) 関東大震災で焼失したとされる 白樂茶碗 銘 白狐(びゃっこ) 藤田美術館 黒樂茶碗 黒光悦(くろこうえつ) 香雪美術館 黒樂茶碗 銘 時雨(しぐれ) 名古屋市博物館 赤樂茶碗 銘 遠山(とうやま) 所蔵先不明 赤樂茶碗 銘 乙御前(おとごぜ) 個人 白樂茶碗 銘 弥生(やよい) 所蔵先不明 膳所光悦(ぜぜこうえつ) 個人 また、2点を除いて重複していますが、古くから“光悦十作”として挙げられているものがあって、 赤樂茶碗 銘 毘沙門堂(びしゃもんどう) 赤樂茶碗 銘 障子(しょうじ) 黒樂茶碗 銘 鉄壁(てっぺき) 白樂茶碗 銘 不二山(ふじさん) 赤樂茶碗 加賀光悦(かがこうえつ) 赤樂茶碗 銘 雪片(せっぺん) 黒樂茶碗 黒光悦(くろこうえつ) 黒樂茶碗 銘 喰違(くいちがい) 個人 赤樂茶碗 銘 ヘゲメ(へげめ) 赤樂茶碗 銘 有明(ありあけ) 滴翠美術館 となっています。 所蔵先は私が数年前に個人的に調べたものなので、現在では変わっている可能性があります。 これらが現在光悦茶碗として伝わっている茶碗で、光悦茶碗研究のベースとなるものです。 もちろん現在ではこれら以外にも光悦作とされる茶碗はいくつも存在し、私が調べた限りでは80点以上あるようです。 しかし全部が光悦作とは言えないと考えているし、研究者によっても見解は異なっています。 正直、美術館に収まっているものの中にも光悦作ではないだろうと考えているものがあります。 いったいこの世にいくつの光悦茶碗が存在するのでしょう。 いまだ世に知られぬ光悦茶碗がどこかにひっそりと存在しているのでしょうね・・・
by otogoze
| 2006-03-18 01:50
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