閑話休題。 【第七十三段】 世に語り伝ふる事 まことはあいなきにや 多くは皆虚言なり あるにも過ぎて人は物を言ひなすに まして 年月過ぎ 境も隔りぬれば、 言ひたきままに語りなして 筆にも書き止めぬれば やがて定まりぬ 道々の者の上手のいみじき事など かたくななる人の その道知らぬは そぞろに 神の如くに言へども 道知れる人は さらに 信も起さず 音に聞くと見る時とは 何事も変るものなり 世間で語り伝えていることは 本当の事など面白くもないのか 多くはみな嘘である 世間の人々は実際以上に物事を大げさにして言うものなのに ましてや 年月が経ち 場所も離れてしまうと 言いたい放題に話を作り 文章にも書きとめられれば そのまま事実となる とくにその道の専門家が書いたものともなれば 無教養な者はわけもなく神のごとくに言うが その道を知る者ならむやみに信じることはない 何事も聞くと見るとでは違うものだ
by otogoze
| 2014-07-16 14:27
| 雑記
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